【PFC-FD療法②】関節の痛みにどう働く? PFC-FD™療法の仕組み
【PFC-FD療法②】関節の痛みにどう働く? PFC-FD™療法の仕組み
関節の痛みは、軟骨のすり減りだけが原因ではありません
「膝の軟骨がすり減っているから、痛みが出ている」
変形性膝関節症について、このような説明を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
確かに、軟骨の変性や関節の変形は、変形性膝関節症の大きな特徴です。
しかし、実際には、レントゲンで関節の変形が進んでいても痛みが少ない方がいる一方、変形が比較的軽くても強い痛みを感じる方がいます。
なぜ、このような違いが生まれるのでしょうか?
その理由の一つが、関節の中で起こる「炎症」です。
そして、慢性的な炎症が続く組織では、通常とは異なる細かな血管、いわゆる「モヤモヤ血管」が増生し、痛みと関係している可能性も指摘されています。
今回は、関節の痛みが生じる仕組みと、PFC-FD™療法がどのように働くと考えられているのかを解説します。

① 関節の中では何が起こっているの?
変形性膝関節症では、軟骨の変性だけでなく、関節を包む「滑膜(かつまく)」という組織にも変化が生じます。
滑膜は、関節の動きを滑らかにする関節液の産生などに関わる組織です。
この滑膜に炎症が起こることを「滑膜炎」といいます。
滑膜炎が生じると、炎症に関係する物質が増え、関節の痛みや腫れ、関節液の増加などにつながります。
さらに、慢性的な炎症が続く組織では、新しい細かな血管が増える「血管新生」が起こることがあります。
こうした異常な血管の増生は、俗に「モヤモヤ血管」と呼ばれることがあります。
血管の周囲には神経が存在することもあり、異常な血管新生と神経の変化が、慢性的な痛みに関係していると考えられています。
つまり、関節の中では、
軟骨の変性 → 滑膜の炎症 → モヤモヤ血管などの増生 → 痛みや腫れ
といった変化が生じることがあります。
ただし、これは痛みの仕組みを簡略化したもので、実際には炎症と血管新生が互いに影響し合い、軟骨下骨や半月板なども痛みに関与しています。
② 私たちの血液には、組織の修復に関わる成分が含まれています
私たちの身体には、傷ついた組織を修復し、健康な状態を維持しようとする仕組みが備わっています。
その働きに関わっているのが、血液中の「血小板」です。
血小板は、出血を止めるだけでなく、組織の修復過程で重要な役割を担っています。
そして血小板には、「成長因子」と呼ばれるさまざまなタンパク質が含まれています。
代表的なものには、次のような成長因子があります。
-
PDGF(血小板由来成長因子):細胞の増殖や組織修復過程に関与します。
-
TGF-β(トランスフォーミング増殖因子β):細胞外基質の形成や炎症の調節などに関与します。
-
VEGF(血管内皮増殖因子):血管新生に関わります。
-
IGF(インスリン様成長因子):細胞の成長や組織の代謝などに関与します。
これらの成長因子は、組織の維持や修復に関わる重要な物質です。
PFC-FD™療法は、こうした血小板由来の成分に着目した治療です。
③ PFC-FD™療法は、成長因子の働きを活用する治療
PFC-FD™療法では、患者さんご自身の血液を採取し、血小板由来の成長因子などを含む成分を抽出・濃縮した後、凍結乾燥した製剤を使用します。
当院では、セルソース株式会社のPFC-FD™を採用しています。
この製剤を関節内に投与することで、成長因子などが関節内の細胞や炎症環境に働きかけることが期待されています。
PFC-FD™療法が目指しているのは、単に一時的に痛みを感じにくくすることではありません。
関節内の炎症環境や組織の修復に関わる働きに着目し、痛みや関節機能の改善を目指す治療です。
成長因子などの生理活性物質が、滑膜や軟骨周囲の細胞にどのように作用するのかについて、研究が進められています。
なお、PFC-FD™がモヤモヤ血管を直接減少させることが証明されているわけではありません。モヤモヤ血管を標的とする動注治療とは、作用の考え方が異なります。
④ PFC-FD™療法で期待されること
PFC-FD™療法については、変形性膝関節症の患者さんを対象とした臨床研究で、痛みや日常生活機能の改善が報告されています。
例えば、膝の痛みが軽減することで、
-
階段の上り下りがしやすくなる
-
立ち上がるときの痛みが軽くなる
-
歩行や外出が楽になる
-
運動療法に取り組みやすくなる
といった変化が期待されます。
こうした変化は、日常生活の質を高めることにもつながります。
もちろん、これらはすべての患者さんに必ず生じるものではありませんが、従来の保存療法だけでは十分な改善が得られなかった方にとって、検討する価値のある治療選択肢の一つです。
⑤ 軟骨を元に戻す治療ではありません
PFC-FD™療法について、「すり減った軟骨が再生するのでは?」と期待される方もいらっしゃると思います。
しかし、現時点では、PFC-FD™療法によって失われた関節軟骨が元通りに再生することは、臨床的に証明されていません。
また、関節の変形そのものを元に戻す治療でもありません。
一方で、関節の形が元に戻らなくても、痛みや日常生活の動作が改善することには大きな意味があります。
関節の痛みの程度は、必ずしも画像上の変形の程度だけで決まるわけではありません。
そのため、当院では画像検査の結果だけでなく、痛みの状態や日常生活で困っていることも重視して治療を検討しています。
⑥ 痛みが軽くなることは、生活を取り戻す第一歩
関節の痛みが続くと、無意識のうちに歩くことや身体を動かすことを避けるようになります。
その結果、筋力が低下し、関節への負担が増え、さらに痛みが強くなるという悪循環に陥ることがあります。
この悪循環を断ち切るためには、痛みへの治療とともに、関節を支える筋力や身体の使い方を改善することも重要です。
当院では、PFC-FD™療法を単独で考えるのではなく、必要に応じて運動療法や生活習慣の見直しなどを組み合わせ、関節機能の維持・改善を目指しています。
⑦ 当院が大切にしていること
「痛みを気にせず、買い物に行きたい」
「もう一度、旅行を楽しみたい」
「趣味のスポーツを続けたい」
「できるだけ自分の足で歩き続けたい」
患者さんが治療に求めるものは、一人ひとり異なります。
宮整形外科クリニックでは、PFC-FD™療法も、そのような希望を実現するための治療選択肢の一つと考えています。
大切なのは、単に検査画像を改善することではなく、患者さんが日常生活の中で感じている痛みや不自由さを少しでも軽減することです。
あなたの“こうありたい”を実現させ、人生が豊かになるお手伝い。
それが、私たちの目指す医療です。
関節の痛みが続き、これまでの治療だけでは十分な改善が得られていない方は、PFC-FD™療法という選択肢についても、ぜひ一度ご相談ください。
次回予告
【PFC-FD療法③】変形性膝関節症に対するPFC-FD™療法の可能性
PFC-FD™療法は、変形性膝関節症に対して、実際にどのような効果が報告されているのでしょうか?
次回は、これまでの臨床研究をもとに、痛みや日常生活機能の改善、効果が現れる時期や持続期間について詳しく解説します。
