【動注治療シリーズ 第2回】なぜ痛みが長引くの? 原因は「モヤモヤ血管」かもしれません
【動注治療シリーズ 第2回】なぜ痛みが長引くの? 原因は「モヤモヤ血管」かもしれません
~慢性的な痛みを引き起こす5つのメカニズム~
「湿布や痛み止めを使っても、なかなか良くならない」
「レントゲンでは大きな異常がないのに、痛みが続いている」
「一度良くなったと思っても、また痛くなる」
このようなお悩みはありませんか?
通常、けがや炎症による痛みは、傷ついた組織が修復されるにつれて徐々に改善していきます。
しかし、なかには数か月、場合によっては何年も痛みが続く方がいらっしゃいます。
その原因の一つとして、近年注目されているのが、「モヤモヤ血管」と呼ばれる異常な新生血管です。
今回は、このモヤモヤ血管が慢性的な痛みにどのように関係しているのか、5つのメカニズムに分けて解説します。

① モヤモヤ血管は、なぜできるのでしょうか?
私たちの身体は、けがや炎症が起こると、傷ついた組織を修復しようとします。
その際、組織に酸素や栄養を届けるため、新しい血管が作られることがあります。
これを「血管新生」と呼びます。
血管新生そのものは、身体を修復するために必要な反応です。
しかし、炎症が長期間続くと、新しく作られた血管が過剰に増えたり、本来減少するはずの血管が残ったりすることがあります。
こうした異常な新生血管は、細く、不規則に入り組んだ構造を示すことがあり、その様子から「モヤモヤ血管」と呼ばれています。
そして、この異常な血管の周囲では、痛みを長引かせるさまざまな変化が起こると考えられています。
② モヤモヤ血管の周囲で起こる5つの変化
1.炎症が続きやすくなる(炎症細胞浸潤)
モヤモヤ血管の周囲には、マクロファージなどの炎症細胞が集まることがあります。
これらの細胞は、炎症性サイトカインなどの物質を放出し、痛みを伝える神経を刺激したり、炎症を持続させたりします。
つまり、傷ついた組織が修復される過程で、炎症がなかなか治まらない状態になる可能性があるのです。
2.痛みを感じる神経が増える(神経新生)
これは、慢性的な痛みを考えるうえで特に重要なメカニズムです。
異常な新生血管が増える場所では、痛みを伝える細い神経線維も一緒に増えていることがあります。
イメージとしては、痛みを感じるセンサーが増えてしまうような状態です。
その結果、以前は気にならなかった軽い刺激や、日常生活での何気ない動作でも痛みを感じやすくなる可能性があります。
例えば、親指の付け根の痛みであれば、ペットボトルのふたを開けたり、タオルを絞ったりする動作がつらくなることがあります。
3.組織が硬くなる(線維化)
炎症が長引くと、組織の修復に関わるコラーゲンなどが過剰に蓄積し、組織が硬くなることがあります。
これを「線維化」と呼びます。
線維化が進むと、組織の柔軟性が失われ、周囲との滑らかな動きが妨げられることがあります。
肩関節であれば動かしにくさや拘縮、腱の周囲であれば動作時の痛みなどに関係する可能性があります。
ただし、線維化はさまざまな要因によって起こるため、モヤモヤ血管だけが原因というわけではありません。
4.むくみや圧迫が生じる(浮腫・組織内圧上昇)
炎症が続くと、血管から水分が周囲の組織に漏れ出しやすくなります。
その結果、組織がむくんだり、関節内に液体がたまったりすることがあります。
さらに、限られた空間の中でむくみが生じると、組織内部の圧力が高まり、神経への刺激や血液循環の障害につながる可能性があります。
つまり、組織が内側から腫れ、圧迫されることも痛みの一因となり得るのです。
5.血液の流れが乱れる(動静脈シャント)
通常、血液は動脈から毛細血管を通り、組織に酸素や栄養を届けてから静脈へ戻ります。
しかし、異常な新生血管の一部では、動脈から静脈へ血液が短絡するような流れが生じる可能性があります。
これを「動静脈シャント」と呼びます。
こうした血流の変化によって、局所の微小循環が乱れ、組織への酸素供給などに影響する可能性が考えられています。
ただし、慢性的な痛みとの関係については、まだ十分に解明されていない部分もあります。

③ これらの変化が、痛みの悪循環を作る可能性があります
ここまでご紹介した5つの変化は、それぞれ独立しているわけではありません。
慢性的な炎症によって異常な新生血管が形成され、その周囲で神経の増殖、浮腫、線維化、循環の変化などが生じることで、痛みが持続しやすい環境が作られる可能性があります。
さらに、痛みが続くことで身体を動かす機会が減り、筋力や関節の柔軟性が低下することもあります。
このように、慢性的な痛みには複数の要因が関係しています。
モヤモヤ血管は、その悪循環に関与する要素の一つとして注目されているのです。
④ だからこそ、異常な血管にアプローチする治療があります
こうした慢性的な痛みのメカニズムに着目して開発された治療法の一つが、「動注治療」です。
動注治療では、痛みのある部位につながる動脈から薬剤を注入し、異常な新生血管の血流を減らすことで、痛みの軽減を目指します。
従来の湿布や痛み止め、関節注射などとは異なる視点から、慢性的な痛みにアプローチする治療法です。
ただし、動注治療によってすべての痛みが改善するわけではありません。
痛みの原因や疾患によって治療の適応は異なり、長期的な有効性や安全性についても引き続き研究が必要です。
当院では、診察や必要な検査によって痛みの原因を評価し、従来の保存療法も含めて、一人ひとりに適した治療をご提案しています。
⑤ 長引く痛みにも、まだ検討できる選択肢があります
「年齢のせいだから仕方がない」
「レントゲンでは異常がないから、我慢するしかない」
「手術をするほどではないけれど、日常生活がつらい」
このように感じている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、痛みの原因は骨や軟骨の変化だけとは限りません。
腱や靱帯、滑膜などの軟部組織、さらには血管や神経の変化が関係している場合もあります。
大切なのは、なぜ痛みが続いているのかを考え、その方に合った治療方法を選択することです。
宮整形外科クリニックでは、内服薬、注射、リハビリテーションなどの保存療法に加え、動注治療という選択肢もご用意しています。
「診療を通じて、あなたの人生を豊かに」
痛みのために諦めていた趣味やスポーツ、日常生活での何気ない動作を、少しでも快適に行えるように。
私たちは、患者さん一人ひとりの「こうありたい」を実現するお手伝いをしていきたいと考えています。
長引く手指や足の痛みでお困りの方は、お気軽にご相談ください。
動注治療について
この治療はオクノクリニックの奥野先生によって2014年に開発されたものです。
当院はオクノクリニックとライセンス契約を結び動注治療を行なっております。
オクノクリニック公式ホームページ
https://okuno-y-clinic.com/
※動注治療は自由診療です。治療の適応、費用、主なリスク・副作用等については診察時にご説明いたします。
次回予告|第3回
「動注治療はどうやって効くの? 使用する薬剤と治療の仕組み」
異常な血管に薬剤を届けることで、なぜ痛みの改善が期待できるのでしょうか?
動注治療の仕組みについて、詳しく解説します。
