【肩関節授動術②】五十肩・凍結肩とは? なぜ肩が固まってしまうのか
【肩関節授動術②】五十肩・凍結肩とは? なぜ肩が固まってしまうのか
〜肩が上がらなくなる仕組みと、長引く症状の原因〜
「最初は肩が少し痛いだけだったのに、だんだん腕が上がらなくなってきた」
「痛みは以前より落ち着いたけれど、肩が固まって動かない」
「リハビリを頑張っているのに、なかなか肩の動きが良くならない」
このような症状でお困りではありませんか?
一般的に「五十肩」と呼ばれる肩の病気ですが、実はその中には、肩関節が硬くなり、動きが大きく制限される「凍結肩(とうけつかた)」という状態があります。
今回は、五十肩と凍結肩の違いや、なぜ肩が固まってしまうのか、その仕組みをわかりやすく解説します。

五十肩と凍結肩は同じもの?
「五十肩」は、40〜60歳代を中心にみられる肩の痛みや動かしにくさを表す、一般的によく知られた呼び方です。
医学的には「肩関節周囲炎」という病名が使われることもあります。
一方、「凍結肩」は、肩関節を包んでいる組織が硬くなり、肩の動きが制限された状態を指します。
つまり、五十肩と呼ばれる患者さんの中でも、特に肩の動きが大きく制限されている場合には、凍結肩が考えられます。
凍結肩の特徴は、自分で腕を上げられないだけでなく、医師や理学療法士が動かそうとしても肩が十分に動かないことです。
これは、単に痛いから動かせないという状態とは異なります。
なぜ肩が固まってしまうのでしょうか?
肩関節は、人体の中でも特に大きく動く関節です。
その動きを支えている組織の一つが「関節包(かんせつほう)」です。
関節包とは、肩関節を袋のように包んでいる組織で、関節を安定させながら、滑らかな動きを支える役割があります。
正常な関節包には柔軟性があり、腕を上げたり、後ろに回したりする際に、肩関節の動きに合わせて伸び縮みします。
ところが、凍結肩では、この関節包に炎症が生じ、次第に厚く硬くなったり、縮んだりすることがあります。
その結果、関節包の柔軟性が失われ、肩関節の動きが制限されてしまうのです。
イメージとしては、伸び縮みする柔らかい袋が、硬く縮んだ袋に変わってしまうような状態です。
肩を動かそうとしても、硬くなった関節包が十分に伸びないため、腕を上げたり、後ろに回したりすることが難しくなります。
炎症と「モヤモヤ血管」の関係
近年、慢性的な痛みや炎症に関係するものとして、「モヤモヤ血管」と呼ばれる異常な細い血管が注目されています。
凍結肩でも、炎症を起こした関節包や滑膜に、新しい血管が増える「血管新生」という変化が認められることがあります。
こうした血管の増加は、炎症や痛みが長引く仕組みの一つに関係している可能性があると考えられています。
ただし、凍結肩の原因がすべてモヤモヤ血管にあるわけではありません。
凍結肩では、炎症に加えて関節包が厚く硬くなる「線維化」や、関節包が縮む「拘縮」が起こることで、肩の動きが制限されます。
つまり、「痛みを引き起こす炎症」と「肩の動きを制限する関節包の硬さ」の両方を理解することが大切なのです。
五十肩には、症状の変化があります
五十肩・凍結肩では、一般的に次のような経過をたどることがあります。
① 炎症期(痛みが強い時期)
肩の痛みが強く、安静にしていても痛んだり、夜間に痛みで目が覚めたりすることがあります。
肩を動かすと痛みが増すため、日常生活にも支障が出やすい時期です。
この時期は、痛みや炎症を適切にコントロールすることが重要です。
② 拘縮期(肩が固まる時期)
炎症による痛みが少しずつ落ち着いてくる一方で、肩の動かしにくさが目立つようになります。
「以前ほど痛くはないけれど、腕が上がらない」
「背中に手を回せない」
このような症状が中心となります。
関節包の硬さや縮みが、肩の可動域を制限している場合があります。
③ 回復期(肩の動きが改善してくる時期)
徐々に痛みが軽減し、肩の動きも改善していく時期です。
ただし、回復までの期間には個人差があり、数か月から年単位に及ぶこともあります。
また、すべての方が自然に十分な可動域を取り戻せるとは限りません。
※これらの時期は明確に分かれるものではなく、症状が重なったり、経過が異なったりすることもあります。
痛みがなくなれば、肩も動くようになる?
ここは、患者さんにぜひ知っていただきたいポイントです。
「痛みが改善すること」と「肩の動きが改善すること」は、必ずしも同じではありません。
炎症が落ち着いて痛みが軽くなっても、関節包の硬さが残っていれば、肩の動きは十分に戻らないことがあります。
例えば、
-
腕を真上まで上げられない
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エプロンのひもを後ろで結べない
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背中を洗えない
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髪を結ぶことができない
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上着の袖を通しにくい
こうした症状が長く続くことがあります。
痛みが少なくなったからといって、必ずしも肩の機能が十分に回復したとは限らないのです。
肩が固まったら、もう治らないのでしょうか?
決して、そのようなことはありません。
凍結肩では、適切な治療やリハビリテーションによって、肩の動きが改善することが期待できます。
まずは、痛みの程度や肩の状態に応じて、薬物療法、注射、リハビリテーションなどの保存療法を行うことが基本です。
しかし、十分な期間、適切な治療を継続しても、肩の動きが改善しない場合があります。
そのような場合には、治療方針を見直すことも大切です。
当院では、長引く凍結肩に対する治療選択肢の一つとして、「肩関節授動術(サイレント・マニピュレーション)」を行っています。
授動術は、麻酔によって痛みを抑えた状態で肩関節を慎重に動かし、硬くなった関節包による動きの制限を改善することを目指す治療です。
もちろん、すべての凍結肩に授動術が必要なわけではありません。
患者さんの症状、拘縮の程度、これまでの治療経過などを総合的に評価し、適応を慎重に判断することが重要です。
大切なのは、今の肩の状態を正しく知ること
肩が上がらない原因は、凍結肩だけではありません。
腱板断裂など、別の病気によって肩の動きが制限される場合もあります。
そのため、診察や必要に応じた画像検査によって、痛みや可動域制限の原因を正しく評価することが大切です。
宮整形外科クリニックでは、肩関節の診察に加え、必要に応じてレントゲン検査や超音波検査などを行い、患者さん一人ひとりに適した治療方法をご提案しています。
肩が動かないからといって、諦める必要はありません。
「もう何か月も肩が上がらない」
「痛みは減ったのに、動きが戻らない」
そのような方は、一度ご相談ください。
私たちは、肩の痛みや動かしにくさを改善するだけでなく、その先にある日常生活や趣味、仕事を再び楽しめるようになることを目指しています。
「あなたの“こうありたい”を実現させ、人生が豊かになるお手伝い」
これからも、患者さん一人ひとりに寄り添いながら、適切な治療をご提案してまいります。
次回予告
【肩関節授動術③】リハビリを続けても肩が上がらない…次の治療選択肢は?
五十肩・凍結肩に対する保存療法と、治療を続けても改善しない場合に考える選択肢について、わかりやすくご紹介します。
宮整形外科クリニック
