研修医を終え、3年目。われわれ医師は専攻科を決定し、それぞれの道に進みます。個人差はあれど、post 研修医。できることはごく限られています。

 

整形外科医はここから、自身が執刀医となって、外来の主治医となって、患者さんから多くのことを学びます。

整形“外科”という名前だけあって、骨折や筋肉、神経、関節の手術ももちろん行います。

はっきりとしたケガ、骨がポキッと折れてしまったような症例は、一目瞭然、手術が必要ですし、１例１例の患者さんを大切に診療にあたることで、整形外科医が“できること”は修練を積むことができます。

 

 

では、それ以外はどうでしょう？

腰が痛い、膝が痛い、手が痺れる、、、われわれにできることはなんでしょう？

 

整形外科専門医として、肩・股関節・スポーツ診療を専門に掲げている今も、自分自身が診察室ですぐに“治す”ことのできる病態は本当に限られていると思います。

　“すぐ”　 でなくとも、治癒せしめることができるのは、「腱が切れている」や「軟骨がすり減って、関節が変形している」など、解剖が大きく傷んでいる病態に限られます。

　　

 

しかしながら、日常生活で困る諸症状、長く続く痛みなどは、手術　“以外”　 でしか治らない病態が圧倒的大多数を占めます。

そういった痛みの原因の多くは、レントゲンには写りません。

整形外科でよく聞く「レントゲンに異常ありません」の多くは、『あなたの痛みの原因はありません』ではなく、『われわれ整形外科医師に治すことができる病態ではありません』です。

関節の靭帯や筋肉、腱の短縮・肥厚、滑走の低下、神経の絞扼・圧迫・牽引・不動など、本来の機能が障害されているために、痛みや痺れ、可動域の制限、力の入りにくさが　“症状”　として現れると考えております。

また、レントゲン所見として確認できる、背骨が曲がっている、関節の隙間が狭い、骨の棘が出ているなどは、これまでの経過の結果に過ぎず、「これらの所見があるから痛いんです」ということにはなりません。

ゆえに、一時的な炎症状態を除き、「湿布と痛み止めをお出しします」で良くなるわけはなく、“症状”を出しているこれまでの経過・エピソード・習慣に対する治療が必要になると考えます。

より具体的には、“症状”を出すに至った、筋・腱・靭帯・神経の局所症状（肥厚・短縮・滑走不良、絞扼・圧迫・牽引・不動）を改善させ、

かつ、あやまった機能障害症候群の習慣を改善し、正しい運動リズム・運動習慣を身につけること が必要になります。

これを可能にするのが、セラピストの人の手によるリハビリテーションです。

 

　“われわれ医師にできること”　は、機能障害を起こしている病態（局所、および局所に影響を与える全身の因子）をできる限り正確に診断し、治療のパートナーであるセラピストと情報を共有し、症状の緩和・治癒・維持・再発予防に導くこと　だと考えております。

この理想的な治療を可能にすべく、意志統一された小さな組織としてクリニックを立ち上げました。

痛みや不快な症状、不安を抱える患者さんが前向きに治療に取り組めるようなリハビリテーションの環境や支援体制、親しみやすく、元気になれる空間・やる気になれる空間を提供したいと思い、準備を進めて参りますので、ぜひご期待いただけますと幸いです。